世界の熱帯から寒帯に広く分布し、温帯の多くの種が生育し、62属2500種がある。日本に22属149種、日本の固有植物は1属80種9亜種26変種。草本、まれに低木。花弁は蜜腺をもつため、蜜弁あるいは蜜葉と呼ばれ、その形態と発生過程の違いは分類形質として有用である。APGV体系ではシラネアオイ科も含むことになった。
キンポウゲ科は特に東アジアの温帯を中心に多くの属と種が集まっている。花は一般的に両性花で放射相称であるが、デルフィニウム属のように左右相称のものもあり、さまざまである。花弁、雄しべ、雌しべ、雌しべは離生して花床につき、被子植物の中ではもっとも原始的な群のひとつである。観賞価値の高い花を咲かせるものやアルカロイドを含んだものが多く、園芸植物や薬用植物として利用される。
Ranaは「カエル」という意味だが、水生の種が、カエルが多く住むような場所に生えることから命名された。
(印象)キンポウゲ科の植物は基本的に可愛らしい。そのほとんどが、葉よりも花が先に咲くか葉があっても、本当に花だけが目立つような種族たちだ。
自宅の庭も必然的にキンポウゲ科の花たちが多く、春先に我こそはと競いあって花を咲かせている。
アネモネラ属(Anemonella)・・・北アメリカ東部原産のバイカカラマツ、1属1種の多年草。アネモネ属やカラマツソウ属とは近縁。

日本に13種1亜種4変種あり、うち2種1亜種3変種が固有。ハクサンイチゲは日本の代表的な高山植物の一つである。シコクイチゲはハクサンイチゲ似るが、花序が複数形になるもので、愛媛県石鎚山に生える。イチリンソウは本州、四国、九州に分布する。オトメイチゲは基準変種のニリンソウに比べて小型で、根茎が紡錘状に膨らむもので、本州(近畿以西)、四国、九州に分布する。コキクザキイチゲは基準変種キクザキイチゲよりも小型で、小葉の幅が1cm以下、神奈川県に分布する。ヒロハキクザキイチゲは大型になるもので、花は直径7cmにもなり、山形県飛鳥の固有。ユキワリイチゲは近畿以西の本州、四国、九州に分布し、日本産の他の本属の種とは異なり、萼片に12〜15個と多く、痩果に明瞭な柄がある。



その他の種として、アズマイチゲ、アネモネ、サンリンソウ、シュウメイギク、ニリンソウ、ヒメイチゲなどがある。


次の4分類群は根生葉が掌状に5裂する。ヒュウガオウレンは花弁の舷部が倒卵形で宮崎県に分布する。バイカオウレンは花弁の舷部がさじ形で、本州(東北南部〜中国)に分布する。変種のシコクバイカオウレンは花弁の舷部が浅いコップ状となり、四国に分布する。オオゴカヨウオウレンは屋久島に分布し、花弁の舷部は円形となる。
オキナグサ属(Pulsatilla)・・・北半球の温帯、亜寒帯に30種分布する多年草。根茎は太く、束生する根出葉を持つ。根出葉は羽状または掌状、または3出複葉をなし、展開中は白い毛でおおわれる。花茎は葉腋から生じ、1花を頂生する。花茎には3個の欠刻のある総苞葉をつける。花は花弁を欠き、花弁状の萼片5〜12がある。
オダマキ属(Aquilegia)・・・北半球の温帯に約10種分布する多年草。花弁基部が突出し距となる。

その他にオダマキ、セイヨウオダマキ(アキレギア)、ミヤマオダマキなど。
ナガバカラマツ、は小葉が長楕円形で、果体は三日月形になるもので、北海道日高地方に分布する。カラマツソウは雄蕊の葯隔は突出せず、痩果に顕著な翼と長い柄があって懸垂するもので、北海道と本州に分布し、海岸草原から高山までさまざまな環境に生育する。
キンバイソウ属(Trollius)・・・北半球に30種ほど、日本産5種の内3種1亜種が固有である。本属には花弁が長くかつ質が薄く、蜜腺があまり発達しない。山地性のキンバイソウと、花弁が短くかつ質が厚く、蜜腺が長く発達する、高山性のシナノキンバイのグループの2群がある。葉は単葉、葉身は掌状に分裂し、表面につやがある。花は放射相称、萼片は花弁状で黄色、花弁(蜜弁)は線形で燈黄色、基部近くに蜜腺がある。果実は袋果。
キンポウゲ属(Ranunculus)・・・世界中に約400種分布し、多くは多年草。根茎や塊茎または塊根を有し、根出葉は叢生する。葉は長い葉柄をもち、基部は鞘状になり、葉形は多様。茎の形態も変化に富む。花は放射相称、両性花で、萼片は5または3、花弁は5以上。黄色が最も多く白、赤、青紫などもある。
次の5分類群は花弁に付属体をもつ。ソウヤキンポウゲはミヤマキンポウゲに似るが、花弁や蜜腺がより小型で、枝や花柄は開出して伸長し、北海道(道北地方や道央地方)低地の渓流沿いに生える。オオウマノアシガタはウマノアシガタに似るが地下茎をもち、青森県と岩手金に分布する。グンナイキンポウゲも地下茎をもつが、オオウマノアシガタに比べて花期がやや早く、細長い花弁をもち、本州(栃木、群馬、山梨、静岡)に分布する。群馬県尾瀬特産のオゼキンポウゲも地下茎があるが、葉の基部が浅い心形となり、裂片の幅が狭い。ツルキツネノボタンは水湿地の植物で節から発根する匍匐性の茎をもち、本州(北部〜中部)に分布する。ヒメウマノアシガタはウマノアシガタを小型にした感じの植物で屋久島のミズゴケ湿原に生える。一方、ヒメキツネノボタンはキツネノボタンを小型にした感じで、葉身が三全裂する点でヒメウマノアシガタと異なる。屋久島の山地草原に生える。
イチョウバイカモは沈水植物で白色の花を咲かせ、北海道と本州に分布する。イチョウバイカモに似て浮葉のないものバイカモで、北海道と本州(中国地方以北)に分布する。中国山地(岡山、広島)には大型のものがあり、これをヒルゼンバイカモとして区別することもある。
クリスマスローズ属(Helleborus)・・・ヨーロッパ中部から南部、さらに西アジア、一部は中央アジアに及び、約15種が分布する常緑性または落葉性の多年草。葉は長い葉柄をもち、鳥足状に深裂する。花は集散花序をなす。萼片は5で花弁は退化している。
サラシナショウマ属(Cimicifuga)・・・日本産は3種1変種あり、1変種が固有。
日本固有種のシラネアオイは大型の混生葉とピンク色の花で特徴づけられ、北海道(西南部)から本州中部に分布し、日本海側に偏る傾向がある。
スハマソウ属(Hepatica)・・・北半球の温帯に約10種分布する匍匐性多年草。アネモネ属やオキナグサ属と近縁で、アネモネ属に含めて扱われることもある。
セツブンソウ屬(Eranthis)・・・ヨーロッパ、アジアの温帯に広く分布する。塊茎のある小型の多年草で、7種ある。
この属には黄花セツブンソウが含まれる。
ミヤマハンショウズルは広鐘形で紫青色の花が単生して下垂し、花弁があり、北海道から中部以北の本州に分布する。エゾワクノテも大型の花が単生するが、花色は黄色である。稚内で採集されたことがあるが、その後は確認されていない。ハンショウヅルは紫褐色で鐘形の花が単生して下垂し、本州(東北南部以西、紀伊半島を除く)と九州に分布する。コウヤハンショウヅルは小粒が大きく葉状で、花の基部につき、本州(紀伊半島)と四国に分布する。シコクハンショウヅルは母種より小苞が小型で、四国に分布する。トリガタハンショウヅルは花がクリーム色で、本州、四国、九州に分布する。シロバナハンショウヅルは花が広鐘形で、雄蕊が無毛で、本州(東北南部、関東西部、東海東部、近畿)、四国、九州に分布する。コボタンヅルは花は白色で多数が円錐花序につき、基準母種のボタンヅルとは葉が2回3出の複葉となる点で異なり、本州(紀伊半島以北)に分布する。フジセンニンソウは乾燥すると黒変するもので、本州(東京、山梨、神奈川、静岡、岡山)と九州に分布する。キイセンニンソウは花が大型で、痩果に毛がなく、小葉柄に関節があり、本州(紀伊半島)、九州(熊本)、石垣島に分布する。
センニンソウ属はつる植物が多いが次の3種は直立する灌木で、花は筒状となる。クサボタンは淡青色の花を咲かせ、北海道、本州に分布する。変種ツクシクサボタンは四国と九州が石灰岩地に分布し、クサボタンとは花糸が葯より長い点で異なる。オオクサボタンは葉に鈍い光沢があり、花が長く、四国と九州の石灰岩岩礫地に生える。ホクリククサボタンは雌雄異株、より大型で低木となり、東北から北陸地方に分布する。ムラサキボタンヅルも筒状の花を咲かせるが、クサボタン類とは異なってつる植物で、本州(東北〜中部)の日本海側に分布すうる。
レイジンソウ亜属
トリカブト亜属


4倍体種のグループには、高山性、山地性、低地性の3群がある。高山性のグループとしては、ホソバトリカブトは磐梯山(絶滅?)、日光山地、関東山地、八ヶ岳連峰、赤石山脈に分布し、花梗に開出毛と腺毛が生える。富士山大沢周辺にはオオサワトリカブトがあり、ホソバトリカブトとは上萼片が僧帽形になる点で区別される。飛騨山脈と頚上山地にはヤチトリカブトがあり、ホソバトリカブトに比べて茎葉の切れ込みが浅く、花梗の枝は広角度に伸びる。ミヤマトリカブトは東北南部から乗鞍岳、白山にかけての地域に分布し、花梗に屈毛が生える。ミョウコウトリカブトは心皮に屈毛が密生するもので、頚上山地の他越後山脈に分布する。キタザワブシは日光、関東山地、八ヶ岳、赤石山脈、木曽山脈に分布し、茎葉の切れ込みがより深く、上萼片が僧帽形になる。赤石山脈北岳の山頂付近の石灰岩地にはキタダケトリカブトが分布し、全体が小型でありながら茎がよく分枝して伸長する。タカネトリカブトは木曽山脈と御嶽、乗鞍岳に分布し、花梗は無毛である。ハクバブシは谷川連峰から志賀高原にかけて分布し、茎葉の切れ込みが浅く、花梗は広角度に伸長する。和名は白馬附子だが、飛騨山脈白馬岳付近からは知られていない。リョウハクトリカブトは両白山地に、ナンタイブシは日光山地にそれぞれ分布する。

低地性の種としては、北海道道央を中心にエゾトリカブトが分布する。知床半島の海岸草原と南千島にはシコタントリカブトが生える。道北地方の超塩基性岩地にはセイヤブシがある。北海道道南地方から九州にかけての広い地域にはヤマトリカブト群が分布する。北から道南地方から関東北部にオクトリカブト、東北太平洋側から関東にかけての沿海地と山梨県と長野県の内陸地域にツクバトリカブト、長野県の湿地にはその変種イヤリトリカブト、関東から中部地方の太平洋側にはヤマトリカブト、近畿から中国地方にはイブキトリカブトが分布する。
ヒメキンポウゲ属(Halerpestes)・・・ヒメキンポウゲはキンポウゲ属に似るが痩果に稜があり、長いストロンを出して繁殖する。関東以北の本州に分布し、砂浜海岸に生える。
日本に4種あり、そのうち2種が固有。エダウチフクジュソウ(フクジュソウ)は北海道と本州に分布し、しばしば2〜3個の花をつけ、萼片は花弁とほぼ等長で、托葉があり、果托が有毛で、葉の下面が有毛であることで日本産の他のフクジュソウ属と異なる。シコクフクジュソウは果托と葉の下面が無毛である点で前種と異なり、本州、四国、九州に分布するが、日本の固有種であるかどうかという点についてはさらに検討を要する。
モミジカラマツ属(Trautvetteria)・・・東アジアと北アメリカの温帯〜寒帯に1種3変種がある。葉は単葉で掌状に分裂する。花は放射相称。花弁はなく、萼片は早落する。果実は痩果。
レンゲショウマ屬(Anemonopsis)・・・レンゲショウマ属は日本固有の単型属であり、レンゲショウマ 1種からなる。本州(岩手〜静岡、紀伊山地)と四国(徳島、愛媛)に分布する。花は点頭して咲くが、熟した刮ハは直立する。参考文献
日本の固有植物 (国立科学博物館叢書)
高山に咲く花 増補改訂新版 (山溪ハンディ図鑑)
園芸植物 (山渓カラー名鑑)
最終更新日 2021/01/17