学名のエランティスは、春と花の2個の言葉でなり、春を代表する花の意。世界で7種知られ、日本には1種が生育する。
セツブンソウは石灰岩質を好み、本州の関東地方以西の低山地の落葉樹林下、山麓続きの田園の土手などにしばしば群落を成して生える多年草。
地下に球状で径1.3〜1.5cmの塊茎が1個ある。茎はまっすぐ、またはやや斜めにのび、高さ5〜15cmになる。混生葉は5〜10cmの長い柄があり、五角状円形で3全裂し、長さ幅とも3〜5cm、裂片は羽状に欠刻する。葉の先端につく苞葉は柄がなく、不ぞろいの線形片に分裂して、輪状に並ぶ。苞葉の中心から1cmぐらいの花柄を1本直立し、その先端に白色でかわいらしい花を1個つける。花は直径約2cm。花びら状に見えるのは5個の萼片である。花弁は5個あるが退化して目立たず、黄色の蜜腺になっている。雄しべは多数あり、葯は淡黄色。雌しべは2〜5個。袋果には短い柄があり、無毛で長さ約1cmの半月形で、先端はくちばし状となる。種子は大きく、褐色の球形で滑らかである。
初夏には地上部は枯れる。
早春植物独特の性質を考慮した栽培が必要。葉はできるだけ枯らさずに長く保ち、希釈液肥で肥培に努めること。塊茎の上下が判明しにくいので気をつける。逆さに植えると発芽せずに腐ってしまうことがある。
植え付けは5〜10球を目安に、深めで水はけの良い4〜5号鉢を用い、硬質鹿沼土4、軽石砂4、赤玉土2を混合した水はけの良い用土で植え付ける。
植えつけ、植え替えとも新芽の動く前の休眠中が適期(7〜9月中旬)。植え替えは3〜4年に一回。
2〜3月は日なたに置き、花後は、風通しが良くて、直接雨の当たらない半日陰へと移動する。
水やりは芽出し時〜4月は多めに与え、休眠後は過湿にならないよう、表土が白く書くのを見て控えめにやる。
施肥は植え付け時に、緩効性化成肥料を元肥とする。表面の鉢縁2〜3ヶ所へ有機性の固形肥料を置肥し、植え替えしない鉢も毎年同時期の施す。4〜6月に2000倍程度の希釈液肥を水やり代わりに与える。
殖やし方は実生による。開花後、約1ヶ月で袋果が割れる。種子の落ちる前に採取して、細かめの用土にまく。翌春には1枚葉が萌え、3〜5年で咲く。
●露地植えのポイント
春は陽が良く当たり、夏は涼しい木陰ができる長雨のかからない場所を選ぶ。庭土を30cm掘り、粗砂を10cmほど敷き、緩効性化成肥料を小さじ1杯分、適度な間隔で入れる。次に掘り上げた庭土に軽石系砂を等合し、腐葉土あるいはパーク堆肥少々をよく混ぜ、塊茎の頂部が、庭土の表面下2〜3cmになるように植えつける。
エランティス・キリキカ (黄花種、トルコやイラク、アフガニスタンなどが原産地。)
キバナセツブンソウ (黄色い花と筒状の花弁が国内種との区別点。フランス、イタリア、ブルガリアなどが原産地。広く販売されている。)
ヒナマツリソウ (雛祭りの季節に咲くので名づけられた。韓国産で花は国内種よりやや大きい。花弁は筒状。)
節分草。
和名は早春に寒さをしのいで芽をだし、節分(旧暦)のころ開花することによる。