四季の山野草図鑑／シソ科

学名：Lamiaceae

分類：双子葉植物

両半球に広く分布し、180属3500種がある。日本には33種111種284変種あり、そのうち50種23変種が固有。APGⅢ分類体系でもシソ科自体に大きな変更はないが、クマツヅラ科のムラサキシキブ属のように、他の科からシソ科に移された属がある。
草本、低木で特に地中海地方から中央アジアにかけて多数分布する。茎葉に腺があり、油成分を含み香りをもつ種類が多い。ハーブとして利用される。茎は四角形になり葉は十字対生、茎の４隅が肥厚してかたい。ゴマノハグサ科に似るが、子房が深い十字形の溝で４個に分かれ、４種子になる点が異なる。葉は対生、花冠は２唇形、まれに１唇形。同科特有の香りが特徴。

Labeaはラテン語で「くちびる」の意味。以前は唇形科とも言われた。

（印象）シソ科の花は一般に小さく、花が寄り集まって大きくて豪華な花に見えるタイプが多いようだ。
また、シソ科にはハーブが多いのも特徴の一つだ。

シソ科の屬と花の紹介（四季の山野草編）

アキチョウジ属（Rabdosia）・・・日本産は7種7変種あり、そのうち5種7変種が固有。
カメバヒキオコシは葉が卵形で先端が切れ込んで尾状に尖るもので、本州（関東～中部）に分布する。ハクサンカメバヒキオコシも葉の先端に亀の尾状の頂烈片をつけるが粗い鋸歯のあるもので、本州（中部～近畿）に分布する。セキヤノアキチョウジは花冠が長く2cmに達して筒状部が目立ち、花梗は長さ1cm以下で短毛があり、花序に苞があり、本州（関東～中部）に分布する。アキチョウジはこれに似るが、花梗は長さ1～2.5cmで無毛、花序に苞はなく、本州（中部以西）、四国、九州に分布する。
イヌハッカ属（Nepeta）・・・ユーラシアとアフリカに２５０種あり、日本産2種のうち、1種が固有。学名のNepeta の語源は古代の都市国家エトルリアの南部のNepeteという町の名前に由来する。
ミソガワソウは葉が長卵形で細鋸歯があり、花は頂生の花序につき、北海道、本州（紀州地方以北）、四国（愛媛）に分布し、山地帯～高山帯の草原に生える。
イブキジャコウソウ属（Thymus）・・・ユーラシアと北アフリカに３０数種。
日本に１種イブキジャコウソウが自生する。矮性低木。全体に腺点があり、芳香を出す。花冠は長さ５～１０ｍｍ。雄しべは４個とも完全、下の２個が長い。
ウツボグサ属（Prunella）・・・北半球に７種、日本産は2種、うち1種が固有。花は数段集まって密な花穂をつくる。萼は２唇形で１０脈があり、下唇は２深裂し、花が終わると上に曲がって口をふさぐ。花冠の上唇はかぶと形。雄しべは４個。下の２個が長い。
タテヤマウツボグサP.prunelliformisは地下茎を出さず、葉は長卵形で無柄あるいは短い柄があり、花糸の上部に突起がなく、本州（岩手～福井）に分布し、山地帯～高山帯の草地に生える。
その他の種としてウツボグサなど
オドリコソウ属（Lamium）・・・世界の温帯に５０種ある。日本産は５種のうち２種が固有。マネキグサは高さ５０ｃｍほどで細い地下茎があり、葉は卵形、花は暗紅紫色で、本州（関東以西）、四国、九州に分布する。ヤマジオウは高さ１０ｃｍ以下、倒卵形の葉が茎の上部に輪生状につき、花は淡紅色、本州（神奈川以西）、四国、九州に分布し、典型的なソハヤキ要素の一つである。
この他の種として東アジアの温帯に広く分布するオドリコソウ、ヨーロッパ原産で日本に帰化したヒメオドリコソウ、東アジア、ヨーロッパ、北アフリカに広く分布するホトケノザなどがある。
カリガネソウ（カリオプテリス）属（Caryopteris）・・・クマツヅラ科より編入。
日本を含む東アジアに６種ある草本、木本で落葉性。
日本にはカリガネソウが野生する。また、ダンギクも暖地に自生し、世界的に栽培される。
キランソウ屬（Ajuga）・・・アジアの温帯、熱帯に４０種分布する常緑宿根草で匍匐性。葉は楕円形、広楕円形、花は春から初夏に咲き、紫色が多い。
日本産は13種あり、そのうち8種が固有。ヒイラギソウはストロンを出さず、葉は卵形～広卵形で粗く鋭い鋸歯があり、本州（東北南部、関東）に分布する。
この他にキランソウ、ジュウニヒトエ、ニシキゴロモなどがある。
クマツヅラ（バーベナ）属（Verbena）・・・クマツヅラ科より編入。
中央アメリカの熱帯、亜熱帯を中心に、一部はヨーロッパ、アジアに分布し、２５０種が知られる一年草または多年草。
バーベナなどがある。
サルビア属（アキギリ属）（Salvia）・・・多くは熱帯から亜熱帯に分布し、９００種以上に及ぶ大きな属。宿根草の種が多いが、ときに一、二年草から木本性低木になるものまである。茎は直立もしくは斜上し、縦線と毛耳がある。葉は全縁、歯牙縁、または羽状全裂し、花苞葉は苞に変わることが多い。花は両性唇状花で群生し、穂状、総状、円錐花序をなすが、まれに腋生する。萼は卵形、円筒形、釣鐘状で２裂し、上唇は全縁または３歯をもち、下唇は２深裂する。花筒は萼に対して超出または内在し、縁辺は２唇裂する。雄ずいは花筒の喉部に着生し、完全雄ずいは２．痕跡雄ずいは花粉がなく、バネの役目をして、昆虫の運んできた花粉を受粉させる仕組みをしている。
日本産は10種7変種、うち8種7変種が固有。アキギリは花が長さ２～３ｃｍで紅紫色、花冠内面は全体に長毛があり、本州（秋田～京都、奈良）に分布する。ハイコトジソウの茎は匍匐して節から根を出し、葉が卵状矛形で３深裂するもので、本州（近畿）に分布する。キバナアキギリは花が黄色、花冠の基部に長毛が環状に生え、本州～九州に分布する。ミツデコトジソウ（ミツバコトジソウ）は葉が卵状矛形で三裂するもので、本州（大阪）、四国、九州に分布する。キソキバナアキギリは葉が薄質で初夏に開花し、長野県南部と岐阜県美濃地方に分布する。シナノアキギリは、葉は心形、茎や花序に腺毛が密生し、群馬県と長野県に分布する。
ナツノタムラソウは花は長さ約１cmで濃紫色、花冠内面に生える環状の毛は中部にあり、本州（関東～近畿）、四国に分布する。ミヤマタムラソウは普通葉は１～２回羽裂し、羽片は卵形で先が短く尾状に尖り、本州（東北、中部地方）に分布する。ダンドタムラソウは本州（神奈川、静岡、愛知、長野、岐阜）に分布し、茎の基部からストロンを伸ばすものである。基準変種キバナナツノタムラソウは花は黄色で、三重県と奈良県に分布する。シマジタムラソウは葉が厚く、花が小さくて雄蕊は花冠から長く突き出すもので、本州（静岡、愛知、三重）の超塩基性岩地に生える。ハルノタムラソウは初夏に開花し、花は白色で、本州（紀伊半島）、四国、九州に分布する。
タジマタムラソウは花は紫色、萼等の内部全体に毛があり、雄蕊は花冠から長く突き出し、葉の頂羽片が大きく、本州（京都～鳥取）に分布する。ハイタムラソウは茎の下部が匍匐枝節間が伸長するもので、福井県に分布する。ヒメタムラソウは花は白色、葉は２回羽状に切れ込み、鹿児島（奄美大島、徳之島）、沖縄に分布する渓流沿い植物である。アマミタムラソウは山地の林下に生え、葉の切れ込みが浅く、頂小葉がやや円形になるもので、鹿児島（奄美大島、徳之島）に分布する。
他にアキノタムラソウ、サルビア・コッキネア、サルビア・スプレンデンス、サルビア・フォリナセア、ブルーサルビアなどがある。
シロネ属（Lycopus）・・・シソ科の属の一つ。名の由来. 「シロネ」は、地下茎が白くて太いことから。
この属には、エゾシロネ、ヒメシロネなどがある。
タツナミソウ属（Scutellaria）・・・日本を含めて広く世界に分布する一年草、宿根草、小低木で約３００種ある。
日本産は18種8変種。そのうち11種7変種が固有。ミヤマタツナミの花冠は白色、基部で折れ曲がることなく、葉は広卵形で、本州（岩手以南）、四国、九州に分布する。ケミヤマナミキは全体に長軟毛が目立つもので、四国～九州に分布する。
ヤマジノタツナミソウは花冠が青紫色でほぼ直角に折れ曲がり、下唇の切れ込みがはっきりせず、葉は広卵形で両面に軟毛があり、萼筒には腺毛があり、本州（関東～中部、広島）に分布する。ハナタツナミソウは花が大きく、長さ約３ｃｍ、葉の両面に腺点があり、本州（中国地方）、四国に分布する。シソバタツナミは葉は鈍い光沢があり、三角状卵形で大きく、下面が紫色をおび、本州（福島・新潟以南）、四国、九州に分布する。トウゴクシソバタツナミは茎に長毛が生えるもので、本州に分布する。イガタツナミは花序が長く、茎に長毛が生え、葉の下面が紫色にならず、本州（福島、中部～中国）に分布する。ホナガタツナミソウも花序が長くなるが、茎には下向きの屈毛が生え、本州（中部～近畿、広島、山口）に分布する。ヤクシマシソバタツナミ（ヤクシマナミキ）は小型の植物で茎は倒伏し、葉は卵形で粗い鋸歯があり、屋久島の特産。ツクシタツナミソウは本属としては大型の植物で、葉は長卵形で両面に短軟毛が多く、本州（中国）、四国（徳島）、九州に分布する。オカタツナミソウは花序が短く、本州（福島以南）、四国に分布する。
デワノタツナミソウは長い地下茎があり、茎には下向きの屈毛があり、葉は下面に腺点があり、本州（東北～中国）に分布する。コバノタツナミは茎の下部が長く地を這い、葉は小型で厚く、本州（関東以西）、四国、九州、沖縄に分布する。アカボシタツナミソウは茎に下向きに曲がった毛があり、葉三角状卵形で基部は切形、下面に赤褐色の腺点が密生し、琉球に分布する。ヒメアカボシタツナミソウは屋久島の固有で、葉は卵形で基部は円形～くさび形、アマミタツナミソウは茎に開出毛が生え、葉は卵形で基部は切形～円形～くさび形、鹿児島（沖永良部島、奄美大島、与論島）に分布する。ヒメタツナミソウは匍匐する茎の節から根を下ろすもので、琉球（喜界島）に分布する。
ムニンタツナミソウは大型の植物で、花は白色で長さ５ｃｍにもなり直立しないで斜上し、茎に短毛があり、葉は卵形、小笠原（父島、兄島）に分布する。
その他の種として日本全土を含むアジアの温帯に分布するタツナミソウなど。
デュランタ（ハリマツリ）属（Duranta）・・・クマツヅラ科より編入。熱帯アメリカに３０種が分布する低木、高木で、茎に刺があり枝を広げ、高さ６ｍまでになる。熱帯地では刈り込みに耐えるので、生垣として多用される。
トウハナ属（Clinopodium）・・・世界に５０種ほど、日本に６種が自生する。花は小型。萼は２唇形で上唇は３裂、下唇は２裂する。花冠の上唇は立ち上がり、扁平が向軸側にそる。雄しべは４個とも完全。
ムラサキシキブ（カリカルパ）属（Cullicarpa）・・・クマツヅラ科より編入。亜熱帯、熱帯や温帯に約１４０種が分布する低木、高木。日本産は10種3変種、うち5種2変種が固有。
トサムラサキは落葉低木で、葉は長楕円形で粗い鋸歯があり、先端は尾状に長く伸長し、両面に黄色の腺点があり、本州の和歌山、広島、四国、九州に分布する。オオシマムラサキははは長卵形で長さ２．５～８ｃｍ。先端は鋭形あるいは鋭尖形で粗い鋸歯があり、基部はくさび形、上面に腺点がなく、下面脈上に腺点と星状毛があり、奄美大島、徳之島に分布する。イリオモテムラサキは葉の下面脈上に星状毛がなく、石垣島、西表島、与那国島に分布する。オキナワヤブムラサキは葉が長さ１～４ｃｍと小型で、下面脈上に星状毛が密生し、基部は切形から円形となり、沖縄島に分布する。
シマムラサキは全体が無毛の常緑低木で、葉は長楕円形～楕円形で肉質、光沢があり、低い鋸歯があり、下面に腺点が密生し、小笠原の父島、兄島、母島に分布し、林内に生える。ウラジロムラサキは枝や葉の下面、花序などに星状毛が密生し、葉は倒卵形～広楕円形で円頭、小笠原の父島、兄島に分布し、乾いた岩場に生える。オオバシマムラサキも小笠原の父島列島、母島列島に分布するが、葉が長卵形～広卵形で質が薄く光沢がなく、先端は鋭頭、下面に腺点があり星状毛が密生し、明るい林縁に生える。
他に北海道から九州に見られるムラサキシキブ、福島県以西から台湾、中国に分布するコムラサキシキブなどがある。
ラショウモンカズラ属（Meehania）・・・日本を含むアジアと北アメリカに６種ある匍匐性宿根草。ラショウモンカズラなど。
ラバンデュラ属（Lavandula）・・・地中海地方、アフリカ、インドなどに２０種ある。ラベンダーなど。
ランタナ属（Lantana）・・・クマツヅラ科より編入。熱帯及び亜熱帯アメリカ原産の亜低木または多年草で１５０種が知られる。
シソ科の主なハーブ・・・オレガノ、シソ、セージ、タイム、バジル、ハッカ、プレクトランサス、マジョラム、ミント、レモンバーム、ローズマリーなど
その他の主な植物・・・サルビア・レウカンサ、シモバシラ、チョロギ、テンニンソウなど