四季の山野草図鑑／ユリ科

学名：Liliaceae

分類：単子葉植物

世界に２２０属３５００種、日本に３９属１３９種、日本の固有植物は６４種２３変種、最近の研究で旧来のユリ科に含まれていた属は疑系統的であることが判明し、APGⅢ分類体系では取扱いが大幅に変更された。チシマゼキショウ属はチシマゼキショウ科としてオモダカ目へ移された。ネギ属とハナビニラ属はヒガンバナ科へ、クサスギカズラ属、ギボウシ属、ケイビラン属、スズラン属、キチジョウソウ属、オモト属、ユキザサ属、マイヅルソウ属、アマドコロ属、ヤブラン属、ジャノヒゲ属、ツルボ属はキジカクシ科（クサスギカズラ科）へ、ワスレグサ属とキキョウラン属はススキノキ科へ移されるとともにクサスギカズラ目に入れられた。キンコウカ属、ノギラン属、ソクシンラン属はキンコウカ科へ移されるとともにヤマノイモ目に入れられるようになった。また、サクライソウ属とオゼソウ属はサクライソウ科にまとめられて、これだけでサクライソウ目とされた。残りの属はユリ目に残されたが、チゴユリ属はイヌサフラン科へ、シュロソウ属、リシリソウ属、ショウジョウバカマ属、シライトソウ属、ツクバネソウ属、エンレイソウ属はシュロソウ科へ移された。シオデ属はサルトリイバラ科とされる見解が支持された。その結果、ユリ科に残された日本に産する属はユリ属、ウバユリ属、カタクリ属、バイモ属、アマナ属、キバナノアマナ属、チシマアマナ属、タケシマラン属、ツバメオモト属、ホトトギス属のみとなった。２０１８年４月１日よりこの体系に変更してご紹介するようにした。（サルトリイバラ科はまだ登録がないためリンクがありません。）

多年草を主とし、熱帯の高山から温暖帯まで、乾燥地を含めよく適応している。根茎、鱗茎、球茎、塊茎を持ち、茎は直立またはよじ登り型、葉は根出葉または茎葉で、互生または輪生し、托葉を欠き、葉脈の多くは平行脈である。花は頂生または腋性、花被片は離性または合生して、円錐、穂状、総状、偽散形状の花序につく。果実は蒴果または液果になる。

科名はギリシャ語でユリを指す言葉から。

（印象）地下に鱗茎や球根を発達させ、大柄で派手なな花が多いと思う。我が家での成績は思わしくなく、やわらかい土と肥沃なドジョウを好むようで、放置して育てるのが難しい。ネギやラッキョウなどのように食用になるものが多いのに対して、スズランなどのように有毒なものも結構多く、油断できない。

ユリ科の屬と花の紹介（四季の山野草編）

アガパンサス属（Agapanthus）・・・南アフリカに10種が分布する。
この属にはアガパンサスがある。
アッツザクラ属（Roodohypoxis）・・・１属１種の多年草で、アッツザクラがある。
アマドコロ属（Polygonatum）・・・キジカクシ科に変更。
アマナ属（Amana）・・・ヒロハノアマナが東北南部から広島県点々と分布する。徳島県と熊本県では記録があるが、現状不明とのこと。葉の中肋に沿って白色の長い斑紋があるのが特徴。
イフェイオン属（Ipheion）・・・南アメリカ原産の球根性多年草で、10種が知られている。
日本ではハナニラ1種だげが栽培されている。
エンレイソウ属（Trillium）・・・シュロソウ科に変更。
オゼソウ属（Japonolirion）・・・サクライソウ科に変更。
オモト属（Rohdea）・・・キジカクシ科に変更。
カタクリ属（Erythronium）・・・北半球に２０種が分布し、北アメリカに多い。
この属には、キバナカタクリとして親しまれるパゴダの他、日本、朝鮮半島、サハリンに分布するカタクリがある。
キバナノアマナ属（Gagea）・・・ヒメアマナが北海道、本州、および福岡県に分布する。キバナノアマナに似るが、全体が小型で、根出葉の幅は約２mmしかなく、５～７mmのキバナノアマナと区別できる。
ギボウシ属（Hosta）・・・キジカクシ科に変更。
キンコウカ属（Narthecium）・・・キンコウカ科に変更。
コルチカム（イヌサフラン）属（Colehicum）・・・ヨーロッパ、北アフリカ、アジア西部及び中央部に４５種が分布する。クロッカスに似るが雄しべは３、本属は６で識別容易。耐寒性の秋植え球根、葉は線形、披針形、長楕円形などで花と同時、またはあとにあらわれる。花は白、紫まれに黄色で、花筒は長く近まで伸びる。
コルチカムもある。
ショウジョウバカマ属（Heloniopsis）・・・シュロソウ科に変更。
シュロソウ属（Veratrum）・・・シュロソウ科に変更。
シライトソウ属（Chionographis）・・・シュロソウ科に変更。
スズラン属（C.majalis）・・・キジカクシ科に変更。
ソクシンラン属（Aletris）・・・キンコウカ科に変更。
タケシマラン属（Streptopus）・・・北半球に約１０種、日本に２種がある。根茎植物。花柄は上の葉の直下まで茎と合着し、先は茎と別れて下向きに花をつける。果実は液果。
ヒメタケシマランの変種タケシマランが本州の近畿以北にみられる。前者は根茎の節間が長くて通常１～２ｃｍになるが、後者はほとんどない。
チゴユリ属（Disporum）・・・イヌサフラン科に変更。
チシマアマナ属（Lloydia）・・・北アメリカ、東アジア、ヨーロッパに約２０種、日本に２種ある。鱗茎植物。花は１～５個が上向きにつく。花被片は宿存する。
チシマゼキショウ属（Tofieldia）・・・チシマゼキショウ科に変更。
チューリップ属（Tulipa）・・・中央アジアから北アフリカまでに広く分布し、５０～１５０と種と認める範囲により数は変わるが、変種、交雑種を入れると数百種に達する。園芸上栽培されているのは２０種ほどである。この属としてチューリップがある。
ツバメオモト属（Clintonia）・・・北半球に６種ほど、日本に１種ある。根茎植物。葉はすべて根生する。花序は総状、花は白色。果実は液果、藍色か黒色。
ツバメオモトが北海道、本州（近畿地方以北、鳥取県）、東北アジアに分布、低山帯～亜高山帯の林床に生える。
ツクバネソウ属（Paris）・・・シュロソウ科に変更。
ツルボ属（Schilla）・・・キジカクシ科に変更。
ネギ属（Allium）・・・ヒガンバナ科に変更。
バイモ属（Fritillaria）・・・北半球に８０数種、日本に６種ある。鱗茎植物。花は１個または２～数個が下向きにつく。子房上位。蒴果を結ぶ。
バイモ属はクロユリ類とコバイモ類の2つのグループに分けられる。クロユリ類では鱗茎が多数の鱗片からなり、下葉が輪生するのに対し、コバイモ類では鱗茎が2個の鱗片からなり、下葉は対生、まれに互生となる。
日本に産するこの仲間は地域的な分化が顕著で、7種がある。コバイモはミノコバイモとも呼ばれ、東海地方西部、北陸地方西部からの中国地方東部にかけて分布。カイコバイモは東京都、山梨県、および静岡県にみられる。コバイモに似るが、花被の蜜腺が基部近くにあって、花が広い釣鐘型になる。イズコバイモは島根県に、コシノコバイモは東北南部の日本海側、北陸、および東海地方にみられ、花被片の縁が細かく切れ込むのが特徴。アワコバイモは四国にあり、コバイモによく似るが、葯が前者は赤紫色、後者は白色。ホソバナコバイモは中国地方と九州に見られ、花が細く直径が1cm以下である点が特徴。葯は白色。トサコバイモは四国と熊本県、宮崎県にみられ、ホソバナコバイモによく似るが葯が紫色。
この属にはクロユリ、バイモがある。
ホトトギス属（Tricyrtis）・・・東アジアに１６種が分布する。地下に短い根茎を有する多年草。茎は直立し、葉は互生し、花は頂部または葉腋につく。花被は釣鐘形、花被片は離生する。花形に２型があり、杯状で上向きに咲き、花柱の枝が傘のように広がるホトトギス型と、釣鐘形で下向きに咲き、花柱の枝の短いジョウロホトトギス型がある。
本属は東アジアに分布が限られるが、特に日本での分化が著しく、その大部分の１２種が日本固有種である。ジョウロウホトトギスは高知県、キイジョウロホトトギスは紀伊半島南部、サガミジョウロウホトトギスは神奈川県、その変種スルガジョウロウホトトギスは静岡県東部に生育する。これらは黄色い花を下向きに咲かせる。ジョウロウホトトギスとキイジョウロホトトギスは多くの葉駅に花をつけ、若い蕾は上を向いている。前者は茎に毛が多く、葉には短い柄があり、後者は茎がほぼ無毛で、葉腋がない。サガミジョウロウホトトギスとスルガジョウロウホトトギスは総状の花序をつくり、蕾のときから下向きである。前者は茎の長さが１ｍを越えることもあり、葉の幅は～３．５cmになるのに対して、後者は通常茎の長さが70cm以下で、葉の幅は２．５cm以下である。チャボホトトギスは静岡県、紀伊半島南部、四国、九州南部と屋久島に、キバナノホトトギスは宮崎県に、タカクマホトトギスは鹿児島県に、キバナノツキヌキホトトギスは宮崎県の尾鈴山に生じる。これらは黄色い上向きの花を葉腋につける。チャボホトトギスは草丈が５ｃｍ以下で、小型の１日花を咲かせる。キバナノホトトギスはチャボホトトギスを大型にした形状で、３０ｃｍに達し、２日花をもつ。タカクマホトトギスは一見キバナノホトトギスに似るが、葉の幅は４～８cmになり、２．５～４cmの後者と区別ができる。キバナノツキヌキホトトギスは葉の基部に茎に貫かた形になるのが特徴。上向きで白色系の花を持ち、茎に上向きの毛が密生するホトトギスは、主に本州（栃木県～茨城県以西の太平洋側）と四国、九州にみられるが、北陸地方にもまばらにあり、隠岐と対馬にもみられる。この変種サツマホトトギスは全草無毛で、鹿児島県西部に分布し、別の変種イワホトトギスは毛が少なくて葉が細く、水の滴る崖に懸垂するもので、関東地方西武と東海地方東部の内陸部に見られる。ヤマジノホトトギスは北海道（南西部）、本州、四国、九州に広く見られるが、北陸地方には極めて少なく、また、太平洋側でもヤマホトトギスの分布域には少ない。固有種とされることもあるヤマホトトギスは韓国にも分布し、固有ではない。その変種イヨホトトギスは花が白色、葉が小形で、愛媛県で採集されたものである。セトウチホトトギスは瀬戸内海を囲む地域に生じる。これらは上向きの白色系の花をもつが、茎の毛は下向きである。ヤマジノホトトギスとセトウチホトトギスは花被が下から１／３のところで平開し、前者は花被基部の密標が赤紫色。ヤマホトトギスは花被が顕著に半曲し、蜜標らしきものはない。タマガワホトトギスは北海道から九州までの冷温帯に分布し、集散花序に上向きの黄色い花をつける。
マイヅルソウ属（Maianthemum）・・・キジカクシ科に変更。
ムスカリ属（Muscari）・・・地中海沿岸地方及び西南アジアに３０種が分布する。ヒアシンス属より小型で、花は壺形か倒卵形で花筒が喉まで広く開かない。
この属にはムスカリがある。
ユキザサ属（Smilacina）・・・キジカクシ科に変更。
ユリ屬（Lilium）・・・北半球の亜熱帯から亜寒帯に分布し、１００種がある。地下に鱗茎があり、茎は直立するか、地下を多少匍匐後地上に出る。葉は互生または輪生する。花は頂生し、単生または総状、円錐、散形花序をなし、観賞価値のある花をつける種も多い。花色はアントキアン色素による桃から紫赤、カロチノイド色素による黄から橙赤、フラボノール色素による白がある。花は上向きから横さらに下向きまで、筒状、漏斗状、杯状、釣鐘状があある。葯は丁字につく。子房上位、蒴果を結ぶ。１９世紀から育種が盛んとなり、多くの園芸品種がある。、
ウケユリは奄美大島とその周辺にある。ヤマユリは東北から近畿地方まで、その変種サクユリは伊豆諸島に分布する。スカシユリは花被片の間があいた花が上向きに咲き、東北地方から新潟県と伊豆半島の海岸に見られる。その変種ヤマスカシユリは長野県以北の本州の山地にミヤマスカシユリは茨城県と埼玉県に見られる。スカシユリは茎が角張り、若いとき全体に綿毛があるのに対して、ヤマスカシユリは茎が丸く、蕾や花柄に綿毛がない。これらの花被片の幅は２～３ｃｍ、葉の幅は３～７mmだが、ミヤマスカシユリは花被片が約２cm、葉の幅は３～５mmと細い。キバナノヒメユリは長崎県と沖縄県に固有。コオニユリに似るが、葉が線形で花がより小さいノヒメユリの変種で、花被片が黄色から黄橙色になる。ササユリは本州（新潟以西）と四国、九州に見られる。サドクルマユリは佐渡島にあり、鱗茎の鱗片に関節がない点が基準変種のクルマユリと異なる。ヒメサユリは新潟県、福島県、山形県、宮城県に見られる。ササユリに似るが、ササユリの花がラッパ型になるのに対して、こちらは花被の先が大きく開く。カノコユリは九州西部に、その変種タキユリは四国と長崎県に分布する。どちらも花被内面に赤紫の鹿の子班がある。カノコユリは花が横かやや下向きに咲き、頭状の柱頭を持つのに対して、後者は花が下向きに咲き、柱頭は切型になる。
この他、オニユリ、、クロユリ、、コネチカットキング、、ヒメユリなどがある。
リシリソウ属（Zygadenus）・・・シュロソウ科に変更。
ワスレグサ属（Hemerocallis）・・・ススキノキ科に変更。
その他の主な植物・・・アスパラガス、ニラ、ニンニク、ヒヤシンス、ラッキョウなど。