ハマウツボ科
学名：Orobanchaceae
分類：双子葉植物
葉緑体を欠く寄生植物、世界に14属180種、日本には帰化種を含め4属7種、日本の固有植物は1種。APGⅢ分類体系ではゴマノハグサ科の半寄生、完全寄生植物（コゴメグサ属、シオガマギク属、ママコナ属やヤマウツボ属など）が本科に含められ、寄生植物が最も多い科になっている。
（印象）ゴマノハグサ科と慣れ親しんできた多くの花がこのハマウツボ科に編入された。そういうことを解説した新しい本を購入した記念に、ハマウツボ科を新設。
ハマウツボ科の屬と花の紹介（四季の山野草編）
コゴメグサ属（Euphrasia）・・・ゴマノハグサ科から編入。
世界に約２００種、日本産は10種1亜種14変種、うち9種13変種が固有。半寄生の１年草。萼は４裂。花冠は２唇形で上唇がかぶと形。雄しべは４個、少なくとも２個の葯室に鋭い突起がある。
ミヤマコゴメグサは花冠が大きく長さ8～9mm、萼筒が鐘形、萼裂片は鈍頭、下部の茎葉は倒卵形、鈍い鋸歯があり、基部が鋭形あるいはくさび形で葉柄に向かって次第に細くなり、本州（山形～滋賀）に分布する。マルバコゴメグサは葉が広卵形、本州（月山、飯豊山、朝日連峰）に分布する。ホソバコゴメグサは葉が楕円状倒卵形で、本州（鳥海山～新潟、長野）に分布する。マツラコゴメグサは葉に2～3対の深い鋸歯があるもので奈良県大台ケ原山からの記録があるが現状不明とされる。オオミコゴメグサは葉に1～2対の低い鋸歯があるもので、滋賀県比良山からの報告がある。
イブキコゴメグサは葉の基部が広いくさび形あるいは円形となり、葉柄が短く、鋸歯は円く、苞葉にやや鋭い鋸歯があり、伊吹山と霊山に分布する。イズコゴメグサは葉の鋸歯が鋭く、苞葉に鋭形の鋸歯があり、神奈川県と静岡県、愛知県に分布する。トサノコゴメグサは苞葉に鋭い亡状の鋸歯があり、四国に分布する。キュウシュウコゴメグサは苞葉に尾状に尖る鋸歯があり、本州（北陸～中国）、九州に分布する。ハチジョウコゴメグサは萼筒が筒状鐘形でやや大きく、長さ約5mm、上部の茎葉の鋸歯は亡状となり、伊豆諸島に分布する。
コバノコゴメグサ（ヒメコゴメグサ）は萼筒の切れ込みが浅く、裂片は鈍頭で、本州（関東～中部）の太平洋側産地に分布する。ヒナコゴメグサは北アルプス北部に分布し、萼筒は中部まで切れ込み、萼裂片は三角状披針形で反曲し、茎や葉に線毛がない。コケコゴメグサは小型の植物で、花冠が小型で長さ約5mm、茎や葉に線毛があり、萼裂片は反曲し、中央アルプス北部の高山帯に分布する。ナヨナヨコゴメグサは萼筒が無毛で、萼裂片は反曲せず、四国（徳島、愛媛）に分布し、超塩基性岩地や石灰岩地に生える。
イナコゴメグサは萼筒が筒形、葉は倒卵形で鋸歯はやや鋭く、苞葉は楕円状卵形、鋭鋸歯があり、長野県南部に分布す、湿地に生える。クモイコゴメグサは葉が卵形で鋸歯が鋭いもので、霧島山に分布する。
エゾノダッタンコゴメグサは葉と苞葉は円状卵形、鋸歯はふつう亡状に長く伸び、花冠は長さ7～8mm、下唇は上唇より長く、北海道（道北、道東）、色丹島、択捉島に分布する。シライワコゴメグサは苞葉は狭卵形で、鋸歯は鋭形、南アルプス中部の石灰岩地に生える。ミチノクコゴメグサは茎に開出気味の長軟毛があり、本州（東北）に分布する。エゾコゴメグサは苞葉が卵形で小さく、鋸歯は亡状とはならず、色丹島、北海道、東北（青森、福島）に分布する。基準変種タチコゴメグサはサハリンや朝鮮半島にも産するため固有ではない。
シオガマギク属（Pedicularis）・・・ゴマノハグサ科から編入。
北半球とくに中国南部からヒマラヤにかけて集中し、約５００種がある。日本産は15種1亜種4変種、そのうち10種1亜種4変種が固有。半寄生で、多年草または１年草。萼は２～５裂する。花冠は２唇形。長い筒部があり、上唇はかぶと状。
オニシオガマは花期に大型の根生葉があり、茎は単純。花は大形で上唇は先端が丸くなった船形で、苞は円形で無柄。本州（青森～石川）に分布し、湿地に生える。典型的な日本海要素である。ハンカイシオガマは茎が上部で分枝し、苞葉は卵形で有柄。本州（関東～中部）に分布する。イワテシオガマは萼筒が３裂し、萼裂片に鋸歯があり、岩手県と秋田県に分布する。ヤクシマシオガマは萼筒が２裂し、萼裂片は全縁で、屋久島の高所に生える。
ツクシシオガマは茎葉が４枚輪生し、花は初夏に開花し、赤紫色で、九州（中部）に分布する。ヨツバシオガマは代表的な高山植物の一つで、花冠の上唇が中部で曲がって嘴状に尖り、本州（東北南部～中部）に分布する。ミヤマシオガマは花期に根生葉が残り、葉身は２回羽状に切れ込み、北海道～本州（中部以北）に分布する。
セリバシオガマは、花は緑白色、葉は羽状に全裂し、本州（中部）に分布し、針葉樹林下に生える。
ミカワシオガマは全体に毛が少なく、花序は頭状になる傾向があり、基準変種シオガマギクよりも葉がやや硬くて小型。本州（愛知、岐阜、広島）に分布する。トモエシオガマは花序が頭状となるもので、北海道（道央～日高）、本州（岩手、山形～近畿）に分布する。エゾシオガマは花は淡黄色、葉の基部が切形で柄が明瞭、北海道～本州（中部以北）に分布する。ビロードエゾシオガマは茎、葉の下面、花梗、萼筒が有毛で北海道と本州（中部以北）に分布する。
この属にはシオガマギク、シロバナヨツバシオガマ、タカネシオガマが含まれる。- ハマウツボ属（Orobanche）・・・ハマウツボより葉や花が大型で、植物体が黄色いシマウツボが小笠原にある。シマウツボはかつて固有属Platypholisとされたが、形態の類似性から1946年に本属に組み替えられている。
- ママコナ属（Melampyrum）・・・ゴマノハグサ科から編入。
北半球に約３０種、日本産は4種4変種ある。うち2種3変種が固有。半寄生の１年草。緑葉はある。花冠は２唇形、つぼみの時下唇が上唇を包む。
シコクママコナは、苞葉は三角状卵形～三角状披針形、1～3対の刺状の鋸歯があり、花は淡赤紫色でのど部は黄色、萼裂片は三角形で先端は鋭形あるいは鋭尖形、本州（宮城・山形以南）、四国、九州に分布するミヤマママコナは苞葉は披針形～狭卵形で全縁、萼裂片は三角形で鈍頭、北海道（西南部）～本州に分布する。タカネママコナは花が黄白色、苞葉は全縁、萼裂片は楕円形で円頭、本州（群馬、山梨、埼玉、長野）に分布し、山地帯～亜高山帯の草地に生える。ヤクシマママコナは花は赤紫色で小型、萼裂片は披針形で鋭頭、屋久島の高所に生える。エゾママコナは苞葉に3～5対の長い鋸歯があり、花冠ののど部は赤紫色、萼裂片の先端は亡状に長く伸び、北海道（東部）に分布する。
参考文献
最終更新日 2019/08/02
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