ハクサンチドリ属は北半球の温帯から亜熱帯にかけて100種ほどの仲間。
山地の湿った岸壁や岩場に生える自生のランで、本州(青森県でも発見されている)から九州、朝鮮半島にかけて広く分布する。九州南限株は着生ランのように樹上に自生している。
高さ約15pの桃紫色の可愛い花を約10輪咲かせ、観賞価値が高い。葉は細く、2〜4枚を展開する。春に芽を出して秋に落葉し、地下の球根だけで冬を越す。
ウチョウラン 庭の春
1種類を鉢植えで楽しむ場合は3〜4号程度の深鉢を使用し、2〜5球ほどを目安に植える。また、シダなどとの寄植えにすると風情があり、5〜6号程度の中深鉢や抗火石鉢などに植える。用土は硬質鹿沼土5、軽石砂2、粉状のミズゴケもしくはヤマゴケの解したもの3などを配合する。
植替えは1〜3年毎に行う。適期は新芽が伸び始める前の2月中旬〜3月中旬、芽をおらないよう注意する。
置き場所は芽出しから葉が枯れるまで、雨除された風通しの良い木陰や半日陰の棚上などに置く。葉が枯れて休眠したら、1週間ほど日陰で乾燥させてから、鉢ごと発泡スチロール箱などに入れ、凍らない程度の保護をする。
水やりは芽出し時期は多めに、その後は表土の乾きを見て与える。休眠中の水やりは不要。1ヶ月に1度ほど乾燥状態を確認し、乾いていたら霧吹きで用土を湿らせる。
施肥は植え付け時は与えず、花後に2000倍の液肥を水やり代わりに施す。
殖やし方は分球による。
アワチドリ (千葉県の特定地の山地の原産種。小輪の多花性種で、距が小さく花期も少し遅い。育種が盛ん。)
イワチドリ (別属。ウチョウランと並んで人気の高い乱の一種。本州(中部〜近畿)、四国、伊豆諸島の主に川沿いの岩場に自生する。)
クロカミラン (佐賀県の黒髪山の特産種で距が小さく、紫紋に特徴がある。)
サツマチドリ (鹿児島県甑島の原産種で、小輪の多花性種。距が小さく花弁に現れる紫紋が美しい。花期はアワチドリよりさらに遅れる。育種が盛ん。)
ニョホウチドリ (亜高山の草原に生える。)
日本の野草(山と渓谷社)、家庭の園芸百科(主婦と生活社)、山野草大百科(講談社)